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21BFH 施設連絡会議インフォーマルミーティング「硬膜外麻酔分娩と母乳育児」 2025.11.29

硬膜外麻酔分娩に欠けるもの ~ソフロロジー式分娩法推進の立場から~

              福永 寿則(産) 高知ファミリークリニック

 

産科の目標は短期的には、母子ともに健やかな妊娠経過・分娩経過、元気な赤ちゃんの誕生であり、この意味では「お産がゴール」になりますが、長期的には、赤ちゃんの幸せな人生、赤ちゃんが加わった家族のさらなる幸せが願われます。すなわち「お産は新しい家族のスタート」という視点が重要となります。しかし、新しい家族、特に母親は出産直後から様々な試練に直面します。このような試練、育児困難は、母親にとって精神的・肉体的ストレスの原因となり、ひいては産後うつ、虐待にもつながるものです。このような状況を考えると、硬膜外麻酔分娩(無痛分娩)は非常に有用な医学的処置であり、必要とされる方には大いなる助けとなるものでありますが、育児支援・母性形成支援を考えると、単に痛みを取るだけでは不十分であると、言わざるを得ません。

 出産はその後の育児の出発点であり、様々な困難に直面する育児を乗り切るためには、一人の女性が『母親』に進化することが必要であり、その母性の形成は妊娠・分娩を通じて促進されます。10か月間胎内に赤ちゃんを意識して過ごすことにより、豊かな母子相互作用が可能となり、母性愛が育まれます。「陣痛の痛みに耐えてこそ母親になれる」などということはなく、陣痛の痛みは全く無用なものです。しかし、母親にとっても胎児にとっても非常な試練である分娩を一緒に乗り切ることによって、母と子に人生を共に過ごす同志としての絆が生まれ、その結果、何物にも代えがたい我が子として没入的な愛情でもって慈しむ母親に守られて子どもは育ちます。

 陣痛、すなわち娩出力=子宮収縮は赤ちゃんが生まれるための大事なエネルギーであり、赤ちゃんも一緒に頑張っていると正しく理解し、妊娠中にイメージトレーニングを繰り返すことにより、潜在意識のレベルでも納得できれば、自然と陣痛の痛みは和らぎ、産婦にとっても達成感のある分娩となり、また、その後に続く育児をも支援するものであります。

ソフロロジー式分娩法は、厳密にはお産の方法ではなく、産前教育法であるので、実際の分娩時に硬膜外麻酔分娩であっても、帝王切開、ラマーズ法、等その他の分娩法を選択しても、母性形成、母子相互作用、産後の育児支援に大いに有用な分娩準備であります。

 当院のソフロロジー式分娩法の指導の実際をお示しします。

  (動画)

 当院のソフロロジー式分娩法の指導は、

1.妊娠14週前後に、ソフロロジーの説明のDVD「笑顔で出産 ソフロロジー式分娩法」を見てもらうように説明します。

2.妊娠18週前後に、当院作成の説明のプリント「ソフロロジー式分娩法~妊娠中からの準備~」を渡し、繰り返し読んでもらうように指導します。

3.イメージトレーニングを助けるCD「ソフロロジー式分娩法」を自宅で毎日、15回以上、BGM的に聞き流してもらうように指導しています。

4.その後は、毎回の妊婦健診の最後に、自宅でCDを聞いていることを軽く確認し、押し付けにならないように注意しながら促しています。

5.分娩入院後は児娩出までCDの音楽を流しています。

 これだけであり、どの手順も要する時間は1分前後です。現在はソフロロジーを目的とした母親教室はしていません。

痛みに苦しむことのない、真剣だが落ち着いたお産があり、それを達成するための5つの簡単な手順があるだけです。また、ソフロロジーの指導をしても他の医療行為などに対して、何か妨げになることも全くありません。

ぜひ一度試していただき、その効果を実感していただけたらと思います。

スライドはこちらからどうぞ

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