資料室

論文など

親子の幸せ目指す母乳育児の推進

高知新聞「声 ひろば」,2003.8.25
福永寿則 高知母乳の会会長(産婦人科医)


 「世界母乳の日」である8月1日以降、5人のお母様方の母乳育児についてのご経験と思いを読ませていただきました。
 母乳育児は大多数の母子にとって本来自然で、容易で、お母さんにも赤ちゃんにも喜びの多いものです。しかし、中にはどうしても母乳分泌量が十分でない方、あるいは病気や仕事復帰のために人工乳を足さざるを得ない方もいます。このような、母乳育児の大切さを理解しながらも、人工乳を足さざるを得ないお母様方の気持ちを理解し、その育児を応援することを忘れると、母乳育児推進の運動は間違った方向に行ってしまいます。
 母乳育児推進を目的として昨年設立された「高知母乳の会」の設立趣意書でも、わずか18行の本文の中で特に、人工乳を追加せざるを得ないお母様方への配慮と、育児支援の重要性が言及されています。
 母乳育児推進の目指すところは、母と子の幸せであり、単に母乳率の上昇ではありません。母乳育児で強調される「豊かな母子相互作用」なども、意識することにより、人工乳の場合でも十分可能となります。
 しかし、現在の問題点は、本来9割以上の母子にとっては自然で容易なはずの母乳育児が、その母子には直接責任のない、周囲の種々の要因によって困難となり、4割程度にしか達成されていないことです。今、多くの母子のため、そのような要因に対して、母乳育児推進を唱えることが必要であると思われます。
TOP